ストレスがかかると体で何が起きるか
心にストレスがかかると、体は大きく2つの経路で反応します。
1つめは「HPA軸」と呼ばれるホルモンの経路です。 脳がストレスを感じると、視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が出て、最終的に副腎からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。
2つめは「交感神経」の経路です。 自律神経のうち交感神経が優位になり、アドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。体は「修復」ではなく「臨戦態勢」に切り替わります。
この「臨戦態勢モード」が一時的なら問題ありません。問題は、それが続いたときです。
それが肌にどう出るのか
バリア機能が低下する
コルチゾールをはじめとするストレス由来のホルモンは、肌の表面でバリアを作る細胞(ケラチノサイト)の働きを妨げることが報告されています。
ある研究では、心理的ストレスがHPA軸と「11β-HSD1」という酵素を介して局所のコルチゾールを増やし、バリア機能を悪化させることが示されています。
心理的ストレス下では、皮膚組織で局所的にコルチゾールが増え、角層のバリア機能が低下することが報告されています(Choe SJ, et al. Sci Rep. 2018)。
バリアが弱くなると、水分が逃げやすくなり(乾燥)、外からの刺激にも弱くなります(敏感肌化)。
皮脂が増え、炎症が起きやすくなる
さらに、ストレスホルモンのひとつCRHは、皮脂を作る細胞に直接作用して皮脂の合成を増やすことが報告されています(Zouboulis CC, et al. PNAS. 2002)。
皮脂が増え、炎症が起きやすくなれば、ニキビが悪化しやすい流れができます。しかも興味深いことに、皮膚は自分自身でCRHを作れることが分かっており、全身が気づく前に肌の局所で炎症が始まる可能性が指摘されています。
修復が後回しになる
交感神経が優位な「臨戦態勢モード」では、体は組織の修復やコラーゲン産生を後回しにする傾向があります。ストレスが創傷治癒を遅らせることは、皮膚科領域のレビューでも繰り返し指摘されています。
つまり、荒れやすくなるうえに、治りにくくなるという二重の負担がかかります。
そして悪循環へ
やっかいなのは、これが一方通行では終わらないことです。
自律神経の乱れは睡眠の質も下げます。そして睡眠不足はそれ自体が肌の修復を妨げ、さらにストレス耐性を下げて自律神経をまた乱す——という悪循環になりやすいのです。 (→ 睡眠不足で肌が荒れるのはなぜ?)
まとめ
- ストレスは「HPA軸(コルチゾール)」と「交感神経」の2経路で体を動かす
- それが続くと、肌ではバリア低下・皮脂増加・炎症・修復の遅れが起きやすくなることが報告されている
- 皮膚は自らストレスホルモン(CRH)を作れるため、局所で反応が始まりうる
- 自律神経の乱れ→睡眠低下→さらに肌へ、という悪循環に注意
- だからこそ「自律神経を整える」視点は、肌のコンディションを考えるうえで無視できない
なお、これらは主に機序(メカニズム)の研究であり、個人差が大きい点には注意が必要です。「ストレス=必ず肌荒れ」ではありません。
では、自律神経に鍼はどう関わるのか——という話は、こちらで解説しています。 (→ 美容鍼で"リラックスする"と言われるのはなぜ?)
参考文献
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Choe SJ, Kim D, Kim EJ, et al. Psychological Stress Deteriorates Skin Barrier Function by Activating 11β-Hydroxysteroid Dehydrogenase 1 and the HPA Axis. Sci Rep. 2018;8:6334. doi:10.1038/s41598-018-24653-z. → 心理的ストレスがHPA軸と11β-HSD1を介し局所コルチゾールを増やしバリア機能を悪化させると報告。
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Zouboulis CC, Seltmann H, Hiroi N, et al. Corticotropin-releasing hormone: an autocrine hormone that promotes lipogenesis in human sebocytes. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002;99(10):7148-53. doi:10.1073/pnas.102180999. → CRHがヒト皮脂細胞に直接作用し皮脂合成を増やすことを示す。
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Fukuda S, Baba S, Akasaka T. Psychological stress has the potential to cause a decline in the epidermal permeability barrier function of the horny layer. Int J Cosmet Sci. 2015;37(1):63-9. doi:10.1111/ics.12169. → 心理的ストレスが角層の透過バリア機能低下と回復悪化を引き起こす可能性を示す。
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Chen Y, Lyga J. Brain-skin connection: stress, inflammation and skin aging. Inflamm Allergy Drug Targets. 2014;13(3):177-90. doi:10.2174/1871528113666140522104422. → ストレス・炎症・皮膚老化をつなぐ「脳-皮膚連関」の総説。






